アングルのバイオリン

violon d'Ingres. 趣味か余技か、それとも悪ふざけか・・・ とにかくこれが私の日常。

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あずなぶうる流しながら

あずなぶうる流しながら、この手紙を書いてます・・・。

言わずと知れた、由紀さおりの名曲「恋文」である。
この歌が流行していた頃、私は、まだ小学生であった。あずなぶうるとは何か、考えても、考えてもわからないのだ。わからないからと言って、そのまま忘れてしまえるほど、あずなぶうる、という言葉は軽いものではなかった。

あずなぶうる。

あだな黒塀、と、「お富さん」でも歌われているから、あずなぶうる、というのも、そんな、アズなブウル、という、何か、粋な言葉使いなのだろうか、と、そこまで考えた。
もちろん、あだな黒塀、というものも、実は意味がわからなかったが。

しかし、アズなブウルを流しながら、手紙を書いているわけである。
手紙を書きながら流すもの、と言ったら、万年筆のインクであろうか。アズなブウル、ではなく、「アズナブウル」という名前のインク。しかし、インクをどこに流すのだ。便箋に流したら、ほとんど、ドリッピング、それは、手紙ではなくて、ジャクソン・ポロックばりの立派なアート作品か、ロールシャッハ・テストになってしまう。由紀さおりが、ロールシャッハレターを、送ったりするものだろうか。

だいたい、この手紙、文面から察するに、別れた恋人にあてたものらしい。それくらいのことは、子供でも何となく理解できる。
歌詞はこのような言葉で終わる。
「心から、あなた様を 思い出して 候」

そうろう、である。これが、またわからない。
そうろう、なんだろう。
ここでひらめいた。「流しながら」「そうろう」、このふたつのキーワードをもとに、これは、「流しそうめん」ではないかと推測したのである。そうろう、と、そうめん、「そう」が一致する。歌詞の最初の言葉が「あずなぶうる」、そして、歌詞の最後の言葉が「そうろう」。このふたつは、つながっているのだその頃、私は、宮沢湖ピクニックランドというところで、「流しそうめん」というものを初めて食べて感銘を受けたばかりであったので、その影響がもろに現れたと見ていい。
してみると、あずなぶうるとは、そうめんか。

そうめんを流しながら、この手紙を書いている、とう考えると、まあ、意味は通じてくる。
そうめんを食べながら、手紙を書いているのである、由紀さおりは。日本の夏を印象づける、何とも風流な名場面である。「夏祭りに買った指輪・・・」という歌詞も出てくるではないか。つまり、あぶなぶうる、とは、そうめんであり、夏の季語であろう。

あずなぶうる = そうめん説

この説を確認するには、まず、親に訊いてみることなのだが、こういうとき、子供は、妙に気を回すものだ。あずなぶうるがそうめんであってくれれば問題はないのだが、実は、子供が使ってはいけないような、口に出してはいけないような言葉だったら、気まずい。流行歌には、おうおうにして、子供向けではない単語が現れてくるではないか。我が家のような、いわば、ピューリタン的家庭では、そんな単語は御法度である。

そんな悶々とした気分で由紀さおりを聴き続けたある日、私は、意を決して、親に尋ねてみた。
「アズナブウル?ああ、歌手よ。外国の歌手。」
歌手?そうだったのか。つまり、その、外国の歌手のレコードをかけながら、手紙を書いていたのだ、由紀さおりは。
あずなぶうる、は、そうめんなどではなく、歌手の名前であった。

シャルル・アズナブール。
83歳。まだ現役であり、今年も日本公演に来ているらしい。「五月のパリが好き」「ラ・ボエーム」など、名曲も多い。
フランスに住んでいた頃、テレビで幾度となくアズナブールを目にし、歌を聴いた。その度に、由紀さおりの歌が耳をかすめてゆく。アズナブールは、由紀さおりが、自分の歌を流しながら手紙を書いたことを知っているのか。そして、そのおかげで、その名前が、アズナブールなんぞ知るはずのない子供たちの頭に刻みつけられてしまったことを。
もしも、アズナブールに会うことがあったら、そのことを彼に伝えたいと思っている。
もちろん、そんな機会はあるわけもないが。

私にとって、初めてのフランスは、当時読み始めた「怪盗ルパン」だと思っていたが、もしかしたら、由紀さおりが流し続けたアズナブールだったのかも知れない、と、ふと思った。蛇足だが、妻も、この「あずなぶうる」の意味に悩んだ子供のひとりであったらしい。
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