アングルのバイオリン

violon d'Ingres. 趣味か余技か、それとも悪ふざけか・・・ とにかくこれが私の日常。

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新世界より

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ドヴォルザークの交響曲九番ホ短調「新世界より」を初めて聴いたのは、小学校の音楽の時間。先生がレコードをかけてくれたのだが、おそらく、有名な第四楽章と、第二楽章の「家路」だったと思う。それから、母親に連れられて、初めて聴きに行ったオーケストラのコンサートの演目が「新世界より」だった。確か、新日本フィルだった。
「新世界」とは、19世紀後半にドヴォルザークが渡ったアメリカのことで、まさに、その頃、アメリカは、ヨーロッパの人々にとって、新世界だったわけで、ドヴォルザークも、黒人霊歌などに大きな影響を受けたようだ。「新世界より」とは、そんな、ドヴォルザークの、故郷の人々への便りのようなものとされている。

しかし、私が、このたび訪れたのは、アメリカではない。大阪の新世界だ。新世界、英語で言えば、ニュー・ワールド、ずいぶん雄大な地名である。しかも、その新世界の中心には、かの通天閣がそびえるという。そしてさらにその通天閣の頂上には、ビリケンさんが鎮座しているときた。新世界曼荼羅と呼んでも過言ではない神秘構造だ。行ってみたいと思うのは当然だろう。

ところが、関西の知人は、口をそろえて、「あそこへは近づくな。そのほうが無難だ。」と忠告するではないか。とはいえ、そう脅かされておめおめと引き下がれるような私ではない。
勇んで、新世界へと向かった。

新世界曼荼羅の入り口付近には新世界市場があって、うっかりしていたのだが、そこに、かの「澤野工房」があったのである。澤野工房とは、ヨーロッパ系のジャズ、とりわけピアノトリオを扱う個人レーベルだ。そういえば、チラシだかサイトだかで、「新世界」という文字を見た覚えがあるのだが、その「新世界」と、この「新世界」とが、今、ようやく結びついたという次第である。ところが「澤野工房」、「本日臨時休業」だそうだ。残念。

新世界エリアに入ると、当然のごとく、目の前には通天閣がそびえている。東の東京タワーと並び称される西の巨人である。しかし、通天閣のライバルは東京タワーなどではなく、実は、エッフェル塔らしい。というよりも、もともと、エッフェル塔と凱旋門の両方を合体させるような意図で築かれたというから、志は高い。しかし、その初代通天閣はもうなく、今そびえているのは二代目である。

通天閣に登る。頂上の展望台にでると、さすがに見晴らしがいい。高所恐怖症の私であるが、ここまでくると爽快である。ただし、足元は見てはいけない。気がつくと、この展望台、何だか揺れている。地震か、と思ったが、そうではなく、構造的に、常に揺れている状態なのだろう。ある種の免震構造か。それが証拠に一向に驚きを見せない従業員たちの姿を見て、ちょっと安心する。そして、ビリケン。ビリケンとは、もともと、アメリカ人アーティストが夢に見て作り出したキャラクターなのだそうだ。英語だったのだ。ビリー・ザ・キッドみたいなものか。それにしても、まさか、そのアメリカ人も、自分の死後、何十年もたって、このように浪速の神様のような扱われ方をされようとは夢にも思わなかったに違いない。実際、ビリケンさんのまわりは人だかりがしていて、近づくことはできない。ビリケン信仰は根強い。
その頃、雷が鳴って、雨が降ってきた。雨のビリケン。ちょっと絵になる。もちろん、雨が降ろうが晴れであろうが、展望室のビリケンさんには何の影響もないわけだが。

通天閣を辞して外に出る。傘を差して新世界を歩いてみた。
狭いアーケード「ジャンジャン横丁」に入ってみる。日曜日とはいえ、まだ3時頃だというのに、立ち並ぶ串焼き屋さんはどこも長蛇の列。店の中は、もちろん超満員である。
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ふと目を転じると、将棋クラブがあって、もちろん、中では将棋を指している人々で賑わっているのだが、外からガラス越しにそれらの対局を眺めている人々がいて、その風景がまた心にしみる。村田英雄の絶唱で名高い「王将」のモデル、伝説の棋士・阪田三吉の碑もこの街にはあるのである。
こんな風景こそが、ドヴォルザークの音楽に影響を与えた新世界なのだろう。もちろん違う。

ジャンジャン横丁を出る。視界の外から、物凄いスピードの車椅子がやってきて、私はもう少しで轢かれそうになった。思えば、大阪では、わずか半日の間に何度も自転車に轢かれそうになった。慣れない土地でぼやぼやしている私も悪いのだが、狭苦しい商店街を、何であれほどのスピードで通過する?挙句の果てには車椅子である。この街の自転車、ならびに車椅子はどうかしている。

新世界の雨はまだやみそうにない。
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