アングルのバイオリン

violon d'Ingres. 趣味か余技か、それとも悪ふざけか・・・ とにかくこれが私の日常。

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渋谷で泉麻人に遭遇する

昨日、泉麻人の文庫本を読みながら、渋谷の街を歩いていた。

そう、私は、歩きながら本を読む。危ない、と忠告したければすればいいが、今まで、危ない目に遭遇した覚えはないので、これからも続けてゆこうと考えている。

さて、センター街の、中古CDショップの角を曲がった時、数人の男たちとすれ違った。何と、その先頭に立っていたのは、誰あろう、泉麻人その人だった。
私は、思わず、立ち止まり、その後姿を見送ると、自分が手にしていた本を確認した。
間違いない、泉麻人の本である。
別に、確認したからどうということはないのだが、思わず、確認せずにはいられなかったのだ。泉麻人を読んでいる私が、偶然にも、街で泉麻人に出遭ったのである。
泉麻人は、私が自分の本を読んでいるのにも気づかず、センター街の中へ消えていった。
少しくらい気づいてくれても良さそうなものだが。

少し前まで、泉麻人という人は、どちらかというと苦手なタイプだと思っていた。いわゆる「業界人」タイプで、新しいトレンドなどに敏感で、という・・・。何しろ、デビューの頃、つまり、80年代には、中森明夫、野々村文宏、田口賢司などと並ぶ「新人類」作家などという捉え方をされていたし、私もそういうものだと思っていた。読まず嫌いである。

しかし、数年前、どうせ、BOOK OFFあたりで買ったのだと思うが、泉麻人の本を読んで、その面白さ、巧さにびっくりした。この人は、あの頃の新人類たちとはまったく違う資質の持ち主だと気づいた。
本人も、「新人類」などというくくり方をされたことに対しては困惑していたようだ。
泉麻人は、散歩の達人であり、優れた観察者であり、何より、それを的確に、軽妙に語る文体を持っている。
かゆいところに手が届くエッセイストなのである。

散歩のエッセイ、というと、私は、川本三郎が好きで、読んでいると、思わず、街に飛び出したくなる。川本三郎みたいに、街の何でもない食堂でビールを飲み、銭湯に飛びこみたくなる。
泉麻人のエッセイもそうだ。都内の一風変わった旅館に泊まったり、謎の定食を試してみたくなる。路線バスに乗って、街を眺めたくなる。

川本三郎が、戦前戦後の古い日本映画の東京を現代に重ね合わせたりするように、泉麻人は、高度経済成長期の、テレビ番組やCM、歌謡曲、アニメ、そんなものを持ち出してくれる。私よりちょっと上の世代にはなるけれど、この時代は十分陸続きで、思わず膝を叩くことが多い。この人は、きっと、幸福な少年時代を過ごしてきたのである。私の世代も含めて、そんな幸福な時代だったのかもしれない。

歩いて読む、電車の中で読む。
泉麻人のエッセイは、そんなテンポにぴったりである。

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Comment

魔羅一郎 says... "ウンポコ"
猫ヤン、今晩は。またお邪魔します。
泉麻人と云えばB級テイスト溢れる軽妙なエッセイで、やつがれも随分と笑わせて頂いたものでした。思うに、もし一冊の本を手に街を闊歩するなら、いったい、誰のエッセイが最適だろうか、と。いつまでも古びず、常に新鮮な何かを喚起されるエッセイ、それは永遠のJJオジサンだって気がします。
JJオジサンは既に鬼籍の人ながら、古本漁りに疲れてホッと一息ついた夕闇の路地に、笑みを浮かべて立っていても、全然おかしくないですからね。
本を手に、街を巡る。いいもんだなぁ・・・と、しみじみ感じます。
残念ながら、やつがれは、猫ヤンの如き、歩行的読書の特殊能力を有しておりません。喫茶店に腰をおろして、カフェ・オーレとカフェ・ラッテの本質的な違いは何ぞや、フランス語とイタリア語の違いか、ノーマルコーヒーとエスプレッソの味わいか、などと意味のない愚考に耽りながら、そっと文庫本を繙きます。ささやかな幸せを感じるひと時です。

トップページのFortuneで、やっと「中吉」が出ました。
ずっと「凶」が続いていたので、もう駄目だ・・・と思っていましたから、救われた気分です。
2005.06.16 19:43 | URL | #- [edit]
猫目 says... "ベサメ・ムーチョ"
魔羅ぼん、おはようございます。
そうですね。街歩きといえば、JJ氏。
最近、全集が復刻されましたね。
昔のままの装丁が嬉しい限りでした。
歩行読書、試してみてください。
街歩きの本を、実際に、街を歩きながら読む、これです。

「中吉」。おめでとうございます。
とうとう、どん底からはいあがってきましたね。
2005.06.17 08:06 | URL | #GaU3vP2. [edit]

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