アングルのバイオリン

violon d'Ingres. 趣味か余技か、それとも悪ふざけか・・・ とにかくこれが私の日常。

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パリの不思議なアパート

もう、夏である。そこで、ひとつ、怪談を。

パリにいた頃、不思議なアパートに住んだ。15年以上前の話である。

その頃、私は一人暮しだったが、魔羅一郎氏という悪友が転がり込んできたことがあった。

アパートには地下の倉庫(カーヴ)があったのだが、以前の住人たちが置いていったらしい荷物でいっぱいだった。片づけようということになり、魔羅氏と、薄暗く寒い地下倉庫を掃除し始めた。すると、出てくる、出てくる、古いものでは戦前、いや、下手をすると今世紀の初頭あたりかと思われる写真、手紙、書類・・・。最初は面白くて珍しくていろいろと眺めていたのだが、捨てるに捨てられず、だんだん気味も悪くなってきた。
大体、古い写真や手紙を捨てるのは、それが他人のものであるにしても、気持ちのいいものではない。

そして、一枚の書類が出てきたあたりでそれは決定的になった。
それは、スピリチュアリズム協会なるものの会員証。年代はやはり、戦前くらいのもの。一口にスピリチュアリズムといっても、いろいろあって、説明も面倒なものなのだが、平たく言えば心霊研究である。19世紀に誕生し、その後、欧米で流行した。
つまり、私の部屋の何代か前の住人は、オカルティストだったのである。

これを手にして、魔羅氏と、私が、興奮しないわけはない。
実は、魔羅氏、「オカルト界のイチロー」とも呼ばれ、パリにも、オカルト文献を狩猟しにきているような人だった。
スピリチュアリズムに関しては、コメント欄ででも、きっと簡潔に説明していただけることと思う。

そして、その次に出てきたのが古ぼけた一枚の写真。どこかの教会の祭壇あたりを写したものなのだが、その中央部、ちょうど祭壇の部分に、白い影がぼおっと映し出されている。俗に言う心霊写真みたいな感じだ。
「こ、これは・・・。」
私たちは凍りついた。一応、魔羅氏は日本でカメラマンをやっていたこともあるので、写真技術には詳しい。これが、撮影時の光のイタズラか、ネガの傷のようなものか、それともトリック写真なのか、尋ねてみた。ところが、こんな古い写真だけではわからないという。ネガがあれば、ある程度調べられるんだけど、と・・。

私たちは、そこで、大掃除を中止した。どうにもこうにも居心地が悪くなってきたからだ。
意気地のないオカルティストもあったものだ。
で、その写真だけ、部屋に持ち帰った。

数日後、学校から帰ってきた私に向かって、魔羅氏が、興奮した口調で言った。

昼間、部屋の中で人の寝息みたいなものが聞こえるんだ。でも、もちろん、誰もいないし、隣の部屋からそんなものが聞こえるはずもないし・・・でも、あれは確かに人の寝息だった・・・。

私は一笑に付した。寝ぼけていたんでしょ、そんなことありえないよ、と。

そして、しばらくして、今度は、私がその寝息を聴く番になった。
それも、やはり昼間のことで、うたた寝をしていてふと目を覚ますと、頭のすぐ横のあたりで静かな寝息が聴こえる。慌てて飛び起きた。夢ではない。確かに聴こえている。しかし、どこから聴こえるのかそれがわからない。
私の部屋は交通量の多い通りに面していて、昼間はかなり騒々しく、テレビもまともに見ていられないほどである。だから、隣の部屋の寝息が聴こえるようなそんな可能性はきわめて少ない。第一、隣の部屋には若夫婦と赤ちゃんがいたはずだが、赤ちゃんの泣き声さえ聴いた覚えがない。
ほかに考えられるとすれば、水道やガスの配管を通じてどこかの部屋の音が伝わるということくらいだが、それも、この騒音の中では難しい。第一、他の声が伝わらず、寝息だけが伝わってくる、というのも納得がいかない。
やがて、寝息は消えたが、私は確かに聴いたのである。
「オカルト界のイチロー」の話は本当だったのだ。

その後、私は妻と暮らし始めたわけだが、すぐに、おかしなことが起きた。「コロッケ事件」である。
コロッケを作ったのだが、沢山作りすぎたので、まだ揚げていない状態のものをいくつかタッパーに入れて冷蔵庫にしまっておいた。翌日、タッパーを開いてみると、コロッケに歯型がついていて誰かがかじったように欠けている。妻も私ももちろんそんなことはしない。第一、生のコロッケを誰がかじると言うのか。ねずみくらいはいるかもしれないが、わざわざ冷蔵庫の中に入って、タッパーを開き、再び蓋をして消えるねずみがいるとしたら、それはほとんど「トムとジェリー」である。

とにかく、気味の悪い話だ。

そこで思い出したのが、部屋に持ち帰った例の写真。
私は、その写真を再び地下倉庫に戻した。
それからは、不思議なことは起きていない。

解釈はさておき、そういうこともあるのである。

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Comment

魔羅一郎 says... "追想"
猫ぴょん、今晩は。
パリの幽霊アパート、懐かしいですね。一つ修正させて頂ければ、私が、あの怪しい寝息を聞いたのは、昼間では無くて夜間の事でした。
猫ぴょんがヴィザの関係で、ベルギーに行っていた間の事だったと記憶します。猫ぴょん不在のアパートに、私が留守番で独り寝していた時の事でした。
確かに、あれは相当はっきり聞こえた寝息でしたね。不審に思い、部屋中を歩き回って、聞き耳を立てて調べたけれど、それらしい音の出所は見当たりませんでした。
でも、横になると、再び奇っ怪な呼吸音が耳元で・・・と聞こえたのでした。
結局、あの音が何だったのかは分かりませんが、ああ云う体験は良いものですね。面白いし、いつまでも記憶に残って、懐かしい思い出となります。

そうそう、先日の猫怪談ですが、あれからは、特に妙な事は起きていません。近所の猫は、今日もまた遊びに来ましたが、いつもの大人しい猫でした。
2005.06.22 22:25 | URL | #- [edit]
猫目 says... "怪猫お玉が池"
魔羅りん、おはようございます。

そうでしたか、夜のことでしたか。
あの寝息ワンスモア、って感じですね。

パリといえば、貴兄が巴里第一夜に宿泊した、カルチェ・ラタンのホテル、あそこ、実は、幽霊ホテルだったそうです。
今では、お払いもして、改装もして、お洒落なホテルに生まれ変わっていますが・・・。
2005.06.23 08:07 | URL | #GaU3vP2. [edit]
idealistk says... "こんにちは"
うーん、ダイアン・フォーチュンに調べてもらいたいものですね。
すでに幽冥人ですが。
ヨーロッパのオカルティストの痕跡に触れられてうらやましいような怖いような・・。
マラさんの魔術書めぐりの成果はどうだったのです? 
興味深いですね。
2005.11.20 12:21 | URL | #- [edit]
猫目 says... "マラさんと私"
書きこみありがとうございます。

魔羅氏の魔道書狩猟の成果、気になりますね。是非、この場を借りて、報告してもらいたいものです。私が目にしたのは、一冊数十万円もするような稀書でした。

不思議なアパート、地下のカーヴからは、パリの地下道への入り口も覗けました。
2005.11.21 09:58 | URL | #GaU3vP2. [edit]
魔羅一郎 says... "蔵書!?"
にゃん玉先生、お早う御座います。
そして、idealistk様、初めまして。宜しくお願いします。
ダイアン・フォーチュンは既に鬼籍の人ですから、調べてもらう為には、その時点で霊界通信が必要になってしまいます・・・。幽霊に、幽霊の存在証明を求めると云うのも、また一興でしょうか。
私の蔵書ですけれど、一番充実しているのは、仏国のオカルティスト、スタニスラス・ド・ガイタ関連のものです。ガイタのものは、初版のみならず、手稿も少しばかり蒐集しました。
後は、クロウリーとか・・・和訳じゃない、パリで出版された『理論と実践』初版などが、まあ自慢と云えば自慢できるものでしょうか。でも、十九世紀以降の、サロン的なオカルト運動よりも、個人的には、もっと古典的な錬金術に興味があって、そちらの方の蔵書の方を、はるかに多く集めました。
idealistk様も、そちらの方面のものに、関心をお持ちの方なのでしょうか?フォーチュンにも、勿論関心はありますけれど、十九世紀以降のオカルティストで、最も興味深く思えるのは、スペアです。フォーチュンやクロウリーを繙くことは、最近ではほとんどありませんが、スペアだけは別で、今でも暇があれば読み返しております。
2005.11.21 10:58 | URL | #- [edit]
idealistk says... "おばんです"
マラ様、名前負けしないすごい蔵書、感服しました。小生は、白魔術(?)の方で、シュタイナーの神智学系統、国書刊行会の翻訳ものはずいぶん読みました。ブラバツキーは、北澤書店(神保町)で、The Secret Doctrineを衝動買いしましたが、書棚で眠っております。クロウリーとかも面白く。
若かりし頃は、オカルト団体に関わっていたこともありますが、能力もなく、中退しました。中途半端です。
これからもよろしく御願いします。今後も、どんどん面白い情報公開してやって下さい。
2005.11.21 22:02 | URL | #- [edit]
idealistk says... "おばんです"
マラ様、名前負けしないすごい蔵書、感服しました。小生は、白魔術(?)の方で、シュタイナーの神智学系統、国書刊行会の翻訳ものはずいぶん読みました。ブラバツキーは、北澤書店(神保町)で、The Secret Doctrineを衝動買いしましたが、書棚で眠っております。クロウリーとかも面白く。
若かりし頃は、オカルト団体に関わっていたこともありますが、能力もなく、中退しました。中途半端です。
これからもよろしく御願いします。今後も、どんどん面白い情報公開してやって下さい。
2005.11.22 00:10 | URL | #- [edit]
魔羅一郎 says... "懐かしの北澤書店"
idealistk様、貴方も北澤書店に通っていらしたのですか。
奇遇ですね。私も、HPBのThe Secret Doctrineを、同書店で購入しました。
もう二十年近く前の事ですが・・・。
分厚い二冊セットで、持って帰るのが重いんですよね・・・あの本。負けず劣らずに分厚い、クロウリーの告白なんかも、北澤で買い求めたものでした。
北澤書店、あの二階には、時々すごい古書が入荷して、随分と溜息を吐いたものでした。足繁く通いましたから、もしかしたら、idealistk様と知らず、北澤書店ですれ違っていた事もあったかも知れませんね。
魔羅一郎と云う名は、このブログの主催者、猫先生に付けて頂いたものです。まったく下品で、しょーもないHNです。オカルト界のイチローを目指せ、との訳の分からない想いが込められた名前だとか・・・。もっとちゃんとした名前が欲しかったと思います。どうか、猫先生、今からでもまともな名前を考えて下さい!
シュタイナーや人智学、神智学関連それにグルジェフなんかの本も、随分読みましたけれど、ひねくれ者故、白よりも黒に近い性根のせいでしょうか(苦笑)、どうも、イギリスやフランスのオカルトに、より関心がありました。
でも、大好きで関心がある割には、オカルトとか心霊とか・・・信じていないのですけれど。
2005.11.22 13:02 | URL | #- [edit]
idealistk says... "神保町ではカレーばかり"
魔羅一郎様
私としては、このHNで世に出ていただければうれしいです。
神保町では、北澤書店は重厚な雰囲気に呑まれてしまうのと、原書を読む甲斐性がないせいで(自分の職業的研究はべつですが)、通ってはいませんでした。共栄堂でカレーを食べるのが習性でした。この記事に共栄堂のある日の出来事をトラックバックしておきまする。
2005.11.22 23:42 | URL | #- [edit]

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