アングルのバイオリン

violon d'Ingres. 趣味か余技か、それとも悪ふざけか・・・ とにかくこれが私の日常。

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浴室昆虫園計画

夏休みである。
しかし、虫取り網と虫かごを持って近くの森へカブトムシを捕りに行く、などということは、都会では無理な話だ。私の少年時代、つまり、昭和40年代でさえ、それは不可能だった。
当時、デパートの屋上に大きなテントを張り、その中に、小さな森を作ってカブトムシやクワガタを放して、それを、お金を払った入場者が捕まえる、という催しが流行していた。言ってみれば、「ラーメン博物館」や「ナンジャタウン」などの小規模なテーマパークのはしりである。今のテーマパークが、昭和30年代、40年代の町並みを再現しているとすれば、その昭和40年代のテーマパークは、自然を再現していたのだ。

近所に森も林も存在しない都会の少年たちは、親にせがんでそんな場所へ行き、カブトムシを捕る悦びを知ったのであった。ちょっとばかり情けない話ではある。

それでも、建物の中にも、そんな自然環境を作り上げることができると知って、私の頭の中では壮大な計画が動き出した。それは、風呂に入っている時に思いついたものであった。題して、「浴室昆虫園計画」。まず、私は、浴室に浴槽というものがあることに着目したのである。これを池として活用し、おたまじゃくし、ざりがに、金魚、タニシなどを放流する。そして、洗い場は全面、土で覆い、扉付近から斜面をつけて、スムーズに、池と化した浴槽につながるようにする。そして、木を植え、小さな森を作るのである。こうしておけば、おたまじゃくしがカエルになっても、そのまま陸地に上がれる計算だ。蝶やバッタ、カブトムシなどが、我が物顔に浴室を飛びまわる、それが、「浴室昆虫園計画」の全貌である。

不幸にも我が家の浴室は狭いが、この小さな空間に、数十種類の昆虫や小動物を閉じ込める。まさに、昆虫のテーマパークである。何しろ、浴室ということで、水が確保されるから、この計画は現実的であると考えていた。あとは、どうやって両親を説得するかということだが、昆虫の生態を研究するという、教育上文句をつけがたい目的であるから、意外と簡単に了解を取りつけられるのではないかという、根拠のない予想を立てていた。

「浴室昆虫園計画」の発想、デパートの昆虫園から来ていることはすでに書いたが、もうひとつ、具体的なインスピレーションは、小学館の「昆虫の図鑑」であった。この図鑑には、ひとつひとつの昆虫の解説とは別に、見開き2ページを使って、昆虫のいる風景が描かれていたのである。何度も何度も繰り返し眺めたその風景は、どこかの田舎の廃屋みたいな場所で、その周囲に、ありとあらゆる昆虫が生息している。まさに、オール昆虫大集合の図である。ノアの箱舟、と言った方が神々しいかもしれない。
個々の昆虫が、自分の求められている役割というものをきちんと理解し、期待通りの位置に、期待通りの姿で鎮座している。こういう、とってつけたような、現実にはありえない図柄、というのが、図鑑の魅力でもあり、博物学的発想である。いわば、自然の断面図とでも言おうか。その、リアルでダイナミックな画風がまた泣かせるわけで、こんな風景を自宅の風呂場に再現してみたかったのだ。

しかし、「浴室昆虫園計画」はあえなく頓挫した。親に、あっさり却下されたことは言うまでもない。そんなものを作ったら風呂には入れなくなる、という当たり前のことに気づかなかったのである。せっかくの風呂場を昆虫たちに明け渡し、幼い弟と年老いた祖母を含め家族5人、風の日も雪の日も、近所の「万年湯」へ通うことになっても実現すべき計画であったのかどうか、まだ少年の私には判断がつかなかった。

あれから30年以上が過ぎてしまったが、その浴室、今でも現役である。浴槽に浸かりながら、時々、昆虫たちが遊ぶ風景を思い描くことがある。
浴室昆虫園計画、実は、まだ諦めていない。

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Comment

魔羅一郎 says... "浴場失楽園"
猫たん、こんにちは。いつもお邪魔しますが、どうか邪険にしないで下さいね。
aikoがカブトムシに託して恋する乙女心を熱唱する歌が、斬新な感性だと評価されているみたいですけれど、私は不満です。どうせなら、カブトムシに恋する心を歌って欲しかった。かつて戸川純が、「樹液啜る・・・」と危ない目つきで歌ったみたいに。
aikoが幼虫に愛を注ぎ、蛹に頬ずりして、孵化した甲虫を舌に乗せて微笑んだりしたら、奇女好みの私なんて、一発で虜にされしまうでしょう。大ファンになって、全アルバムを買いに走ります。
でも、所詮はただの退屈なラブソングです。残念ながら、カブトムシはメタファーに過ぎません。
昆虫は良いですね。
けれど、私や猫たんの様な、中年の域に達した男が、「虫が好き!」とカミングアウトすると、二つの反応が考えられます。
まずは、「少年の心を持った」との好意的な評価。でも、これは希です。大抵は、「気持ち悪い・・・」とたった一言でお終い。二次元美少女キャラとしかエッチ出来ない、永遠の童貞と同じ目で見られます。

方や、『堤中納言物語』に描かれた虫愛づる姫を以て嚆矢とし、王蟲が初恋の相手と云う変調処女ナウシカに結実する「蟲を愛する美少女」と云う系譜があります。まあ、世俗の色恋沙汰なんぞに現を抜かす俗悪少女に辟易し、永遠の処女幻想に憧れる男の妄想なのでしょうけれど・・・。
犬でも猫でも無く、不快な蟲を愛でる美少女の姿には、どこか蠱惑的で、抗しがたい淫靡な魅力があります。
「美しい少女たちと、デューク・エリントンの音楽以外、みんな消えてしまえばいい。だって醜いんだから」と暴言を吐いたのは、作家でジャズマニアのボリス・ヴィアンでしたが、私だったら、デューク・エリントンは消えてしまって良いから、昆虫と美少女たちだけを残して欲しいです。
猫たんの「浴室昆虫園」から純粋な部分をそぎ落とし、不純な空想ばかりを膨らませて暗黒に純化した桃源郷が、私の夢見る人工楽園です。
どうせなら、そちらの実現を計画して下さい。
そして、完成の暁には、是非とも私を招待して下さいね。
2005.07.20 10:55 | URL | #- [edit]
猫目 says... "月光の白き林で"
魔羅ゲーノ、おはようございます。
これからは、邪険にしますね。

月光の白き林で、
木の根掘れば蝉のさなぎの
いくつも出てきし・・・。

これですね。
それはそうと、貴兄の蜘蛛恐怖症、ならびに、タランチュラ飼育はどうなりましたか?蜘蛛界のメーテルリンクこと魔羅ゲーノの魂の成長記、復活させてくださいませ。
2005.07.21 08:14 | URL | #GaU3vP2. [edit]
魔羅一郎 says... "アラクノフォビア"
相変わらず、意地悪な猫吉君ですね。
私を殺したければ、刃物は要りません。蜘蛛を投げつければ、ショック死します。蜘蛛への恐怖は増大こそすれ、少しも減少しません。
夏は恐怖の季節ですよ。トイレに立つ時でさえ、蜘蛛が垂れ下がってきはしまいかと、冷や汗たらたらです。
それでもタランチュラとは、毎日一緒にお風呂に入っています。背中を流してくれます。いいヤツなんだけど、「ゴメンね、それでも君を愛せないんだ」と呟く私は不実な男なのでしょうか。

月光の黒き林で、木の根に埋もれた悪夢を掘り出して、タランチュラ育成日記を再開したい気持ちはやまやまなのですけれど・・・。
頑張ってみます。
2005.07.21 12:44 | URL | #- [edit]

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