アングルのバイオリン

violon d'Ingres. 趣味か余技か、それとも悪ふざけか・・・ とにかくこれが私の日常。

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大山総裁もし戦わば

 これは事実談であり・・・ 
 この男は実在する!!   
      (梶原一騎「空手バカ一代」より)

隠れた名著と呼ばれる書物がある。
いつのまにか古本屋の片隅に追いやられ、やがて市場にさえ出回らなくなる書物がいつの世にも存在するものである。 

「大山カラテもし闘わば」(池田書店)と題する書物が、例えばそうだろう。著者は言うまでもなく極真会館総裁大山倍達、そしてこの書物は、総裁が空手家としての全生命を賭けて私たちに送る、闘いのハウツー本なのである。

路上で痴漢に遭遇したらどう防御するか、酔漢にからまれたらどう身をかわすか、やくざに因縁をつけられたら、どう闘うか、そんな類のハウツー本なら巷には五万と氾濫しているが、この本はそんなレベルのハウツー本とは違う。プロレスラー、ボクサー、カマキリ拳法、ナイフ投げ、日本刀、ピストルなど、あらゆる格闘家や武器と闘うためにはどうしたらよいか、総裁が身をもって学んだ心得を教えてくれるだけでなく、何と虎やライオン、ヒョウ、ゴリラなどの猛獣との一戦をも想定してくれるのだから、もう贅沢というほかあるまい。

松島トモ子の例をあげるまでもなく、私たちが今すぐにでもライオンと一戦を交える事態が起こらないとは言いきれない。そんな時、数々の猛獣と死闘を繰り広げてきた総裁のアドバイスがどれだけ役に立つかは、容易に理解できるであろう。
ただ、大山総裁は、こう書いてる。
「ライオンに素手で勝てるという男は、猫とすら戦ったことのない人間であろう。」
猫ならともかく、ライオンに勝てると考えている人間が、広い世界といえども果たして何人いるのだろう。おそらく多くて5人程度か?だとすれば、このメッセージはその5人に向かって書かれた、きわめて専門度の高いものであると言えよう。
 
そして、大山総裁は、対ライオン戦について、ある作戦を考えていることを明かす。それは、「うまくダッキングしてもぐりこめたら、相手がオスライオンなら、下半身にもぐりこんで、両手でがっしりわきを抱きしめるか金の玉をつかみ、これを握りつぶしてみたい。」ということ。繰り返し書くのも気が引けるが、「握りつぶしてみたい。」とは、大胆な決意である。

実際に、大山総裁は、ライオンと対戦寸前までいったという。
ヨルダンのフセイン国王に招かれて空手の指導に行った時、王妃が「ライオンと戦ってみては?」と持ちかけたというのだ。幸か不幸か、対戦は実現しなかった。もし、その時、総裁対ライオンの世紀の一騎打ちが実現していたなら、総裁は作戦通り、ライオンの下半身にもぐりこみ、作戦を遂行できたのだろうか。

総裁は、本書において、人間対猛獣のエピソードをいくつか語ってくれているが、ひとつ、見落としている貴重な一戦がある。それは、江戸川乱歩著「人間豹」の中に描かれている、美女対豹の究極のデスマッチ。豹と戦った勇敢な女性は、当時、名探偵明智小五郎の助手をつとめ、後に明智夫人となる文代さんで、賊に何と熊の着ぐるみをまとわされて大観衆の群がる折の中に放りこまれ、豹と戦わされたのである。最初はサーカスの見せ物の「熊対豹」のつもりで見守っていた観衆も、遠くから聞こえてくるような女の悲鳴と、豹に襲われて露出した若い女の裸体を目の当たりし、ようやくこれが人間対豹であることに気づいたという、何とも滅茶苦茶な状況であった。試合は、完全に豹のペースで進んだが、危機一髪、名探偵明智小五郎が駆けつけ、ノーコンテストとなってしまう。決着はつかなかったのだ。
 
ライオンとは戦う機会のなかった総裁ではあるが、何とゴリラとは戦ったことがあると書かれている。場所はケープタウン、ローデシア首相の自宅。空手の指導をしていた時、そこで飼われていたゴリラが逃げ出したのである。ゴリラはメス、体重は200キロほどというから曙太郎並である。しかも、人間の子供を抱えているではないか。  

「『やえあっ!』三、四歩走り、猛然とダッシュして飛び、背を向けかかっているゴリラの左大腿部に、私は渾身の飛び足刀蹴りを食らわした。(中略)ゴリラはかくんと腰を落とした。」

そしてゴリラは子供を放りだし、森の中へ逃げてしまったのである。総裁の攻撃は、いわゆる「膝かっくん」に近かったと推測できる。これは、ゴリラのような体力のある相手には有効であったのだろう。
かつて、極真空手と新日本プロレスの全面抗争が噂された時、極真の東孝は、体力で勝るプロレスラーと戦うことを想定して、相手の膝関節付近を横から蹴る攻撃を練習していたという。もしかしたら、東孝、総裁のゴリラ対策からヒントを得たのかもしれない。その後、東は、極真を出て、より実戦的な空手を目指し、「大道塾」を始めることとなる。

総裁の遺伝子は、例えば、「熊殺し」ウィリー・ウィリアムスにも受け継がれた。映画「地上最強のカラテpart2」(1976年)にて、熊と戦い、見事勝利したウィリーだが、改めて問題の映像を見てみよう。「勝った」とナレーションされればそのようにも見えるが、「負けた」と言われればそうも見えるし、「熊と戯れた」と言われれば、なかなか楽しそうだなあ、と思える。つまりは、よくわからない、のである。

数年前、テレビの企画で、藤原組長が熊と戦ったことがある。試合は呆気なかった。熊の張り手一発で吹っ飛ぶ組長。戦意喪失、組長の完敗である。

もちろん、総裁によれば、総裁、熊とも戦っている。ただ、戦いの途中で中止命令がでてしまった。「空手バカ一代」でも描かれたシーンである。
総裁の作戦はこうであった。

「熊が立ち上がり、手を広げたとき一気に突っこんでのどに抱きつく。そうしておいて、のどを平拳で突くか、耳の後ろの急所をまわし打ちで打つ。」

ウィリーは、かろうじて、この作戦を遂行していたように見えたが、組長は、総裁の本を読んでいなかったのだろう、熊に何もさせてもらえなかった。もっとも、もともと関節技を得意とし、打撃技を持たない組長にとって、総裁のアドバイスは意味を持たなかったかもしれない。組長、戦う相手を間違えたのである。

最後に、「牛殺し」として名を馳せた総裁の、「牛と戦って勝てる男の条件」を紹介したいと思う。

「(1)百メートルを十秒台で走れるスピードが必要 
 (2)体重七十五キロ以上   
 (3)腕立て伏せをたてつづけに行う腕の力と、天井のサンをつかんで歩けるだけの指の力が必要
 (4)手刀で瓦を平均二十五枚ないし三十枚割る。」

これらの条件がどれだけの根拠に基づくものかはわからない。むしろ、すべて、当時の大山総裁がクリアしていた、というだけであろうと思われる。しかし、「腕立て伏せをたてつづけに行う腕の力」とあるが、たてつづけに何回やればいいのか。3回くらいでもかまわないのだろうか。
吟味が必要な条件である。
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Comment

魔羅一郎 says... "HeLp!"
空手なんぞに何の興味も無く、平和に暮らす動物たちを虐待してはいけませんよねぇ・・・。動物の立場から、「もし総裁と闘わば」ってなハウツー本が記されても良さそうなものです。

貴方は平和を愛するゴリラです。森で静かに暮らしていたら、突然、大山総裁が襲いかかって来ました・・・。

貴方は無益な殺生を嫌うアフリカのライオンです。満腹で眠たげな午後、昼寝をしていたら、突然凶暴な大山総裁が雄叫びを上げて突進して来ました・・・。

貴方は森の熊さんです。蜂蜜を探していたら、突然大山総裁と熊殺しのウィリーに蹴りを入れられました・・・。

貴方はドナドナを歌いながら草をはむ雄牛です。食肉工場に連れて行かれそうな不安に脅えていると、そこに大山総裁がやって来て、今すぐ昇天させてやると、無茶な事を言いました・・・。

さて、どうする!?
いったい、如何にして、動物たちは大山総裁を撃退すれば良いのでしょう。
猫師範、どうか、か弱き動物たちの為に、総裁を打ちのめす奥義を伝授して下さい。

2005.07.25 20:16 | URL | #- [edit]
猫目 says... "ワインと総裁"
魔羅スキー、おはようございます。

残念ながら、総裁を止める術はありません。動物たちは、甘んじて、総裁の攻撃を受け続けなければならないのです。

ワインですか。
そうですね、最近は、シャトー・ラトゥールをよく振って、アルコール分を飛ばしてから飲む、なんてことをやっています。
なんてことはもちろん嘘ですが、最近は、白を飲むことが多いです。銘柄?そんなものは気にしません。っていうか、気にしていたら、私には買えないものばかりです。「やまや」で、安いやつをまとめて買ってくる、それだけの男です。
2005.08.03 08:27 | URL | #GaU3vP2. [edit]

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