アングルのバイオリン

violon d'Ingres. 趣味か余技か、それとも悪ふざけか・・・ とにかくこれが私の日常。

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遥かなり、一騎宇宙

プロレス・メディア、格闘技メディアが、現在のような多様性と速報性がなかった四半世紀前、「少年マガジン」に連載されていた「四角いジャングル」は、「同時進行ドキュメント」として、私たちに格闘技界の動向を事細かに伝えてくれたほとんど唯一のメディアだった。原作はもちろん梶原一騎。
次から次へと事件が起きる格闘界に、高校生だった私の胸は、毎週、熱くなっていた。

空手家・赤星潮を主人公にして、怪鳥ベニー・ユキーデと「マーシャル・アーツ」への挑戦を描いた前半、アントニオ猪木の一連の異種格闘技戦、極真会館、という二つの軸を中心に描かれた後半、そして、その二つの軸は、「猪木対ウィリー」という「世紀の対決」へと収束してゆくわけだが、この劇画が存在しなければ、この試合もあれほどヒートアップしたかどうかは疑わしい。極真空手と新日本プロレス、という、当時の格闘技界を二分する勢力が、全面戦争寸前という異常事態にまで発展したのである。
中村誠と山本小鉄はどちらが強いのか、という話題で、教室がもちきりだったことなど、今の若いファンには想像すらできまい。

控え室で、タイガー・ジェット・シンは、空手警官キム・クロケードと乱闘になりかけた。藤波は、車を運転中にミスターXの急襲を受けた。
Xは、その後、ユキーデ兄弟を襲い、にせウィリーを襲い、その勢いで極真NY支部を急襲したが、マス大山のオーラに圧倒されてしまった。ちょっと前なら桜庭がグレイシー一族の、今なら五味あたりがシュートボクセの隠し玉の襲撃を受けたりもしそうである。リオのカーニバルの最中だったりすると、より一騎的だ

一体、どうやって、世界各国に散らばる格闘家の動きを逐一把握できたのだろう。一騎の情報網、恐るべしである。当時、世界の格闘技界は、間違いなく梶原一騎の手の中にあった。格闘家たちは、どこをどう逃げても、結局、一騎の手の中である。お釈迦様か?
赤星潮のみならず、謎のカンフーの使い手・林白龍、怪物・ミスターXまでをも、この世に送り出してしまったことがその証拠である。フランケンシュタイン博士か、いや、まさに神だ。
今や、神の子、といえば、KIDだが、神、といえば、梶原一騎なのである。

「四角いジャングル」と、「空手バカ一代」、そして、一騎の遺作である「男の星座」。私は、この三作品を「一騎実録三部作」と呼びたい。まさに、広大な一騎宇宙、一騎コスモスが展開されているのである。

戦後のマス大山の活躍を描いた「空手バカ一代」。その続編でもあり、現在の世界総合格闘技戦争前史ともいえる「四角いジャングル」。そして、格闘技界や芸能界の裏側を描いた「一騎人生劇場 男の星座」である。残念ながら、「男の星座」は、一騎の死により絶筆となってしまう。あとわずかでも長く生きていれば、一騎の筆は、猪木対ウィリーという、力道山対木村政彦に匹敵する昭和格闘技戦の頂点にまで達したことであろう。今でも何かと取り沙汰されるこの一戦の裏側を、生々しく報告してくれたはずだ。「四角いジャングル」では描き切れなかった真実が、自身の女性関係も含めて描かれていたことは間違いないだけに、残念でならない。

平成の格闘技ファンに告げよう。この三部作、必読書である。刮目して読むべし。
そこには、現代の総合格闘技ムーヴメントの胚芽が間違いなく存在している。
格闘技は、PRIDEやK-1から始まったわけではないのだ。

「四角いジャングル」の主人公とも言うべき怪鳥ユキーデは、前田日明と戦ったドン・ナカヤ・ニールセンの師匠である。
そのユキーデ、グレイシー一族の長男・ホリオンと非公開の試合を行い、負けたという。
その同じユキーデは、映画「スパルタンX」で、ジャッキー・チェンと戦った。
新日本プロレスに、ジャッキー・チェンとの試合を提案されたのは、船木誠勝である。
船木は、このオファーに嫌気が差し、格闘技系プロレス、前田率いるUWFに移籍、後にパンクラスを設立し、ホリオンの弟であり「世界最強」と言われるヒクソンに破れ、引退した。

これだけをとってみても、歴史のダイナミズムというものを思い知るはずである。

ちなみに、浅草キッドの名著「お笑い男の星座」は、一騎スピリットを継承するものであることは言うまでもない。
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