アングルのバイオリン

violon d'Ingres. 趣味か余技か、それとも悪ふざけか・・・ とにかくこれが私の日常。

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戦メリ。

Gyaoで、戦メリを観た。
BOAの曲に、「メリクリ」というのがあったと思うが、もちろん、あれではない。「戦場のメリークリスマス」、略して「戦メリ」である。

「戦場のメリークリスマス」は1983年の映画で、監督は大島渚、主演に、デヴィッド・ボウイ、坂本龍一、ビートたけし、という、ちょっと考えられないような人々を持ってきたものだから、当時のサブカルチャー界は大騒ぎだった。80年代サブカルの頂上決戦、ハルマゲドンと言っても良い。雑誌「宝島」なんかは、毎号、戦メリの撮影状況と関係者へのインタビューを載せ、戦メリ一色、まさに、戦メリ景気というものがあったのである。

20年ぶりに観直した戦メリ。それは、私の記憶を覆すようなとんでもない映画であった。
まず目につくのは、ヨノイ大尉役の坂本龍一の暴力的なまでの怪演ぶりである。ジャワの戦地でばっちり濃厚メイクをしているというサプライズはもちろん、ぼそぼそと何を喋っているやら聞き取り不能の台詞、手や指が落ち着きなくふらふらと遊んでいるのも、いかにも素人臭くて、観る者を不安にさせる。指くらい、ピシっとせい!と、渚は言えなかったのだろうか。
その演技力で、俘虜の英兵デヴィッド・ボウイに一目惚れしてしまうという表現をしようとするものだから、もう、切ないくらいにわかりやすい。あ、惚れたな、恥らっているな、困っているな、失神だな、と、手に取るように理解できる。
目の前で、あのメイクであんな演技をされて、デヴィッド・ボウイはよく噴き出さずにいられたものだ。NG集とかを観てみたい気がする。いくら、「地球に落ちてきた男」でも、そう簡単に耐えられるものではなかろう。

要は、ホモセクシャル映画なのだ。三つ巴、四つ巴のホモ大会である。
少女漫画趣味と言ってもよい。最近では、BOYS LOVEと言うのかな。
その構図も、実に分かりやすい。分かりやすすぎるくらいだ。

坂本龍一の上官を演じる内田裕也の存在も見逃せない。内田裕也と坂本龍一が共演しているということは、実は、驚くべきことなのだ。音楽の分野ではあり得ない夢の共演である。もっとも、坂本龍一、最初、内田裕也や三上寛なども出演すると知って、烈火のごとく怒ったという話もある。
余談であるが、親分である裕也を守るためにロケ地におもむいた、ホタテマンとして一世を風靡していた安岡力也が、ボウイのボディガードが開いていた空手レッスン会場に乗りこみ、このボディガードの首筋に手刀を叩きこんでKOしたというのだが、これは、「宝島」誌で力也本人が報告していたことなので、真偽は不明であるが、そんな乱暴なことをする必要があったのだろうか。ボウイも、さぞ驚いたことだろう。
ホタテマン、エキストラで良いから出させて欲しいと、大島渚に頼み込んだらしいが、顔がバタくさいから日本兵の役は無理、と断られたらしい。
当時は気がつかなかったが、裕也、あるシーンで、間違いなく、「よろしく。」と言っている。

坂本龍一によるサントラは、確かに日本映画音楽史上に残るものなのかもしれない。その後、戦メリのサントラは、BGMの定番として、テレビ番組などで頻繁に使われるようになった。有名なメインテーマだけではない。気をつけて聴いていると、その他にも、当たり前のように使われている曲が多い。西のポール・モーリア、東の戦メリとして、BGM界のメインイベンター、横綱と言っても良い。

そんな背景があるものだから、本家の映画を観ても、おいおい、またこれ使ってるよ、他にないのかよ、いつまでも戦メリじゃ芸がないだろ、という逆転した感想を抱いてしまう。下手な音楽スタッフが選んだとしか思えないのである。

このキャスト、メイク、音楽、素人っぽいわかりやすさ、これでは、正月の「かくし芸大会」のパロディドラマである。井上順が出ていないのが残念だ。ハナ肇の校長先生の銅像もないか。

それにしても、こんな、とんでもない映画だったのだろうか。ほとんど珍品である。80年サブカルスター大集合、という、大島渚のマーケティング的な意図は成功したのだろうが、こんなものに、何ヶ月も、サブカル少年たちはつきあわされ、熱くなっていたのか。もちろん、踊らされる方が悪い。私も踊らされた。公開初日に観に行った。恥ずかしい。

「世界の中心で愛を叫ぶ」、略して「セカチュー」、こんなものに感動している若人も、20年後、きっと、恥ずかしい、と思う時がやって来る。それを切に願ってやまない。

この映画唯一の功績、それは、人気漫才師ビートたけしを映画界に誘い、後の北野武監督の誕生につなげたことかもしれない。それを言うなら、映画音楽家としての坂本龍一を誕生させたことも忘れてはいけないか。

「世界のサカモト」「世界のキタノ」、巨匠揃い踏みの珍味である。
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