アングルのバイオリン

violon d'Ingres. 趣味か余技か、それとも悪ふざけか・・・ とにかくこれが私の日常。

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旅の匂い

どこの街にも匂いというものがある。
夜を徹して走ってきた列車が、車輪を軋ませながら終着駅に滑り込む。見知らぬ国の見知らぬ駅である。
列車が止まるのを確認して、荷物を抱え、ホームに降りる時の、その瞬間が好きだ。
まず、大きく息を吸い込む。朝の空気はどこでも気持ちのよいものだが、そこに、その街ならではの匂いが確かに感じられるのだ。
匂いを嗅ぐことによって、私は、新しい街に到着したことを実感する。

街の匂いは、温度や湿気、植物や、人々の吸う煙草、そして、食材やスパイスの香りなどによって作られるものだろう。だから、匂いは、その土地そのものである。
ヨーロッパなら、私は南が好きだ。南の国々の方が、匂いが濃厚な気がする。例えば、スペイン、イタリア、ポルトガル、ギリシャ、地中海の周辺の国々の、あのオリーブ・オイルをまきちらしたような街の匂いがたまらない。

フランスだと、プロヴァンスの古都アヴィニョンの匂いというものが、今でも忘れられない。ヴァニラのように甘く、それでいて、どこかで柑橘系が混ざったような、そんな匂いだった。
一年後、再びアヴィニョンへ行く機会が訪れた。
待ちきれない思いで駅に降りると、まさしくあの匂いがする。私の鼻の記憶に間違いはなかったのだ。

パリの匂いは何だろう。
私は、ジターヌとか、ゴロワーズとか、その類の安煙草の匂いだと思っている。妻は、ビールの匂いだという。味覚や嗅覚に関しては妻のほうが数倍も優れているから、おそらく、妻の言う通りなのだろう。
いや、でも、やっぱり、安煙草の匂いに間違いないと思う。

パリでは、13区の中華街のはずれに住んでいたことがある。
この界隈には、中華食材店が沢山あって、街全体が、癖の強いスパイスの匂いに包まれている。
私の住む街・大久保にも、ここ数年で、何十軒ものアジア食品店が生まれた。時々、散歩がてら、これらの店を覗いてみる。すると、懐かしい、あの、パリの中華街の匂いがして、ふっと、時と場所を超えて、当時の記憶が甦ってくるのだ。よくよく手元の商品を見れば、当時、パリの中華食材店で散々目にしたものではないか。

散歩のつもりがいつの間にか、旅に変わる。
匂いには、そんな力もあるようだ。

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