アングルのバイオリン

violon d'Ingres. 趣味か余技か、それとも悪ふざけか・・・ とにかくこれが私の日常。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

アジェによるラルティーグ



ラルティーグの動き回る視線、それは、少年の頃から持ち合わせていたもののようだ。
ラルティーグ少年を写した写真がある。
ウジェーヌ・アジェの、「リュクサンブールの人形劇」と題された写真で、そこでの主人公は、パリ6区のリュクサンブール公園で人形劇に見入っているらしい子供たち。

この子供たちの中に、ラルティーグが紛れている。
私が見た写真集の解説によると、縞の服を着て、画面の中央からやや右側に立っている少年が、ラルティーグその人だというのだ。
ラルティーグは、1894年生まれだから、写真が撮られた1898年には、4歳くらいということになる。ラルティーグは裕福な家に生まれ育っており、そのことはこの写真に写し出された彼の服装を見ても伺い知ることが出来るだろう。いわば、いいとこのお坊ちゃんである。

もちろん、アジェは何も知らずにシャッターを押したのである。まさか、この子供たちの中に、後に有名な写真家となるラルティーグがいるなどとは、夢にも思わなかったことだろう。被写体のひとりとなったラルティーグにしてからが、ウジェーヌ・アジェその人に撮されていたなどということに気づかなかったに違いない。

私は、目を皿のようにして、この写真を眺めてみた。幼き日のラルティーグは、人形劇に見入っている。前から三列目の席にいる四歳の彼には、前に腰かける子供たちの帽子が邪魔だったのだろう、思わず、立ち上がり、帽子の隙間から人形の芝居を覗きこんだ。 何しろ、本の中の小さな写真だ。なかなかはっきりと判別は出来ないのだけれど、どうも、立ち上がっているのはラルティーグだけらしい。わずか4歳のラルティーグを熱中させるほど、その人形劇は面白かったのだろうか。もちろん、そうには違いないのだが、それより興味深いのは、ラルティーグが、まるでファインダーを覗きこむようにして人形劇を見ていることだ。

人形劇というと優雅なものを想像するかもしれないが、ここでいうギニョルというやつは、昔も今も、ドタバタ劇に相場は決まっていて、激しく動き、暴れ回って、子供たちの視線を釘づけにする。

自らスピード狂であり、自動車やグライダーなどを被写体に、躍動感あふれる写真を撮ることとなるラルティーグが、4歳の時にこんなものに見入っている姿は、子供だから当たり前とはいえ、少しばかり興味深い。ドタバタ劇に注がれている幼いラルティーグの視線。右へ左へ動き回る人形たちを、きっと、夢中になって追っているのだ。この時、ラルティーグがカメラを持っていたら、跳ね回る人形たちを撮していたかもしれない。しかし、ラルティーグが父親にカメラを買ってもらうのは8歳の時、4歳のラルティーグには、ただ視ることしか出来なかった。

アジェのカメラは、そんなラルティーグの姿をいつの間にか捕らえていたわけだ。

幼い日に人形劇に視線を送っていたラルティーグは、やがて旺盛な好奇心を発揮して、見るもの、視界を横切るものをファインダーに収めるようになる。
スポンサーサイト

Post comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackback

trackbackURL:http://libertin.blog11.fc2.com/tb.php/72-85005c7c
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。