アングルのバイオリン

violon d'Ingres. 趣味か余技か、それとも悪ふざけか・・・ とにかくこれが私の日常。

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セルジュ・ゲンズブールの涙

セルジュ・ゲンズブールが泣くところを、2度、見たことがある。

もちろん、テレビのヴァラエティ番組の話。
まず、ゲンズブールの両親が住んでいた家というのを撮影したVTRを見せられた時。
彼の両親は、ロシア系のユダヤ人であり、フランスに亡命してくる前は、黒海沿岸のフェオドシアという町に住んでいた。ゲンズブールは、両親が若い頃に住んでいた家というのを見たことがない。
初めて目にする、その家を凝視しながら、ゲンズブールはぽろぽろと涙をこぼした。
「どうだい、セルジュ?」
傍らでは、小金治のような司会者が、ゲンズブールの気分を盛り上げようと、さりげなく言葉を挟む。
「こんなもの見せやがって。」
などと言ったかどうだか憶えていないが、ゲンズブールは、涙を隠そうともしなかった。

2度目は、こんなシーンである。
スタジオに呼ばれたゲンズブール。お節介な司会者が、「セルジュ、聴いてもらいたいものがあるんだ。」と言う。
すると、幕が開き、少年少女合唱団みたいな子供たちが、何やら、ゲンズブールの歌を替え歌にして歌っている。歌は何だったのかは忘れてしまったが、歌詞の内容は、「セルジュ、煙草は良くないよ。体を大切にしてね。」という、何ともぬるいものであった。まあ、フランスのヴァラエティは、日本のヴァラエティに負けず劣らず、ぬるい。
ゲンズブールは、子供たちの歌を聞きながら、煙草をくわえ、しかしながら、涙を流していた。ただ、この時は、「けっ!」という態度をわずかながら残していたようだ。せっかく禁煙を勧める子供たちの前で、煙草を離さないというのが、せめてもの抵抗だったのだろう。

セルジュ・ゲンズブール。
画家を目指していたが挫折。クラブのピアノ弾きをしていたが、1959年に歌手としてデビューした。
その後、フランス・ギャルの「夢見るシャンソン人形」や、フランソワーズ・アルディの「さよならを教えて」などのヒット曲も書く。
シャンソン、ジャズ、アフロ・ラテン、ロック、レゲエ、ファンク、と、常に時代の先端を行く音楽を取り入れ、カメレオンのようにスタイルを変化させてきたが、その根底に流れているのは、文学や美術への傾倒と、自分の醜い(本人の弁)外見へのコンプレックス。
「シャンソン(歌)なんて、マイナーな芸術さ。」
などと自嘲気味に語ったりもした。

ブリジット・バルドーとのデュエット曲「ジュ・テーム・モア・ノン・プリュ」が放送禁止となり、バチカンに、「悪魔だ」とキャンペーンを張られた事件。
どうせ税金に取られるのなら、と、生放送中に500フラン札に火をつけた事件。
テレビで共演したホイットニー・ヒューストンに、「I wanna fuck you」と言い放ち、一同を呆然とさせた事件。
国歌「ラ・マルセイエーズ」をレゲエで歌い、右翼から襲撃予告を受けた事件。

とにかく、いつも何かをやらかす、挑発的であぶない男が、セルジュ・ゲンズブール。
しかし、私の考えでは、それらはすべてコンプレックスの裏返しであり、偽善者ならぬ「偽悪者」なのが彼。常にジターヌ(タバコ)と酒を放さず、無精髭を生やし、危ない目つきをして暴言を吐いたが、実際には、すべて計算づくの行動だった。
「さかしまのダンディズム」とでも言うべきか。


ゲンズブールは、テレビにも随分と出ていたから、時々、こうして脇の甘いところが顔を出してしまう。
ああ、やっぱり、この人、偽悪者だ。そう思わされるのである。
フランス人もそんな素顔を知って、楽しんでいたのだろう。

徳光さんほどではないにしても、ゲンズブール、意外と涙もろいのである。
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Comment

森の宮文化村 says... "なんかイメージが湧きました"
はじめまして。ゲンズブールネタでやってきました。涙の話。「こんなもの見せやがって。」 という言葉がまさにイメージわきました。
「ジュ・テーム・モア・ノン・プリュ」はジェーンバーキンとだけデュエットしたのかと思ってました。また私もゲンズブールのことなど書こうと思います。
2005.12.18 18:31 | URL | #- [edit]
natsue says... "TBありがとうございました。"
TBありがとうございました。
素敵なblogですね。
自分はゲンズブール好きなんですがどうして好きなのかいまいち上手に表現できませんでした。
でも、「こんなもの見せやがって」みたいなことを言っちゃう彼が好きなんだなぁ。。と猫目さんの文章を読んですっきりしました。
また時々覗きにきますね♪
2005.12.18 21:47 | URL | #- [edit]
猫目 says... "はじめまして。"
森の宮文化村様
「ジュ・テーム・モア・ノン・プリュ」は、
最初、B・Bとのデュエットだったんですが、発禁になってしまったんです。で、その後、ジェーン・バーキンと再録音に至ったというわけです。
聴き比べてみると面白いと思います。

natsue様
ゲンズブール、お好きなのですね。
悪態をついているんですが、どうしても、優しさとか、人間臭さとか、そういうものが見え隠れしてしまうのも、彼の魅力かもしれません。
ゲンズブールは、私のアイドルです。
2005.12.19 23:16 | URL | #GaU3vP2. [edit]
ragaraja says... "はじめまして"
はじめまして。この内容、はじめて聞く話しでおもしろかったです。自分もゲンスブールが好きで、ブログ作ってます!よろしければ見に来てください!!
2006.04.05 12:13 | URL | #- [edit]
猫目 says... "はじめまして"
regaraja様、はじめまして。

私は、ゲンズブールが死ぬ前後の数年間、パリに住んでいました。大ファンでしたので、死のニュースを聞いた時はかなりショックでした。

テレビでも何度も彼を見ていたので、そんなシーンを思い出した次第です。

また遊びに来てください。
2006.04.05 21:53 | URL | #GaU3vP2. [edit]

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