アングルのバイオリン

violon d'Ingres. 趣味か余技か、それとも悪ふざけか・・・ とにかくこれが私の日常。

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「戦国自衛隊」で思い出した

昨夜のドラマ「戦国自衛隊」は、凄まじく脱力する作品であった。
10秒に1度、突っ込みどころが襲ってくる。最後は、「サトエリのサトリ」と、ネットでは早くも呼ばれているシュールなシーンで終わるわけであるが、壮大な学芸会のような味わいがあった。
半村良の原作、そして、千葉真一主演の角川映画とは、ちょっとだけ時代がずれた、オリジナル脚本ということらしい。江口洋介主演のリメイクは見ていないが、これも、悲惨だったようだ。

ただ、関が原の戦いを見ていて、隆慶一郎の小説を無性に読み返したくなった。
断っておくが、隆慶一郎と、峰隆一郎は、違う。BOOK OFFなどにいくと、時々、混同されて置かれているのを見つけ、一抹の寂しさを覚えるのだが、とにかく違う作家である。

1984年、「吉原御免状」でデビューした隆慶一郎は、死ぬまでのわずか5年間に、「影武者徳川家康」「花と火の帝」「捨て童子・松平忠輝」などの長編小説、短編小説を著した。
「吉原御免状」を初めて読んだときの興奮は忘れられない。こんなに面白い小説があったのか、こんなにすごい作家がいたのか、と、仰天した。これほど面白い小説、滅多にあるものではない。
そして、憑かれるように、すべての作品を読破した。

隆慶一郎は、網野善彦のいわゆる「網野史観」にインスパイアされ、日本史の闇の部分を掘り起こす。吉原を、権力の手の届かない「公界(くがい)」「無縁」として捉え、「傀儡子(くぐつ)」一族などの生き残りの抗争として、歴史を見直す。教科書には載らない、中世以降、歴史の裏に隠れてしまった者たちのネットワークが明らかになる。周到に組まれたプロットと時代考証により、歴史の謎が見事に解けてゆくのである。もしかして、これが事実なのではないか、とさえ思えてしまうくらいの説得力がある。圧倒的な筆力による物語が史実を巻き込んで展開される。

昨日のドラマでは、随分と馬鹿馬鹿しいものとなってしまった関が原の戦いを基点として、徳川家康の影武者が表舞台に上がってしまう。隆の長編は、時代設定がほぼ重なっているから、それぞれの作品、登場人物が絶妙に絡み合ってくる。だから、夢中で読み進めることになってしまう。すべて読んでしまわないと気がすまなくなってしまうのだ。

とにかく面白い。誰が何と言おうと面白い。それが、隆慶一郎の、一連の小説だ。その筆力に、びっくりするに違いない。
ほとんどは文庫本で入手可能だから、是非、読んでいただきたい。

「戦国自衛隊」を見ながら、私も、久しぶりに「吉原御免状」から読み進めてみようと思った。
隆慶一郎を思い出させてくれて、反町隆史には感謝したい気持ちでいっぱいである。


「吉原御免状」 隆慶一郎 (新潮文庫)
「影武者徳川家康」 隆慶一郎 (新潮文庫)
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Comment

idealistk says... "読みましたよ"
「影武者徳川家康」(でしたっけ)は私も読み、感心しました。隆慶一郎のような集中力が欲しいです。
2006.02.11 08:26 | URL | #- [edit]
猫目 says... "読まれましたか!"
idealistK様、
そうでしたか、やはり、読まれていますか!
ぺダントリーと、史実の裏をかく伝奇性、綿密なプロット、息もつかせぬ展開、間抜けな言葉ですが、まさに知的興奮を覚える作家だと思います。
時代小説はお好きですか?
2006.02.13 08:43 | URL | #- [edit]
魔羅一郎 says... "タイムワープ、アゲイン!"
idealistK様、こんにちは。お久しぶりです。
そして猫目先生も、序でにボンジョルノ。
戦国自衛隊に限らず、SFではお馴染みの「タイムスリップ」。
子供の頃から、私はこの「時間旅行」ってテーマに不満を抱いています。
目くじらを立てる程の事でも無いのでしょうけれど、大人げなく苦言を呈すれば、タイムスリップと云う未曾有の事態に直面しながら、どうしてテーマが「人間ドラマ」でしか無いのでしょうね。
時間そのものの解明(は無理にしても)とか、時間に関する洞察、或いは空想を展開して欲しいと、いつも願わずにはいられません。
つまり、過去や未来に行って、時代の違う男女の恋愛だの、チャンバラだのなんて稚拙な空想では無く、「はて!?こうしてタイムスリップ出来ちゃったって事は、時間てのは、いったい何ぞや?」との疑問からはじめて、有名な「自分殺しのパラドックス」に迫って欲しいのです。過去を変えると歴史が変化してしまうから・・・なんて取って付けたようなご都合主義の時間哲学では無くて、過去の自分を殺したら、自分はそれ以降存在しない訳だから、タイムスリップで過去に戻ることも出来ません。すると、タイムスリップする自分が(過去の)自分を殺害する事は不可能で、タイムスリップが起きて、自分を殺しちゃう・・・って、堂々巡りの矛盾に陥ります。
折角SFなのですから、普通のドラマで描ける愛だの恋だの冒険だのなんて脇に追いやって、時間の特性そのものを、テーマとする物語を描いてくれた方が、ずっとずっと興味深いと・・・そんな不満を抱き続けております。だから、時間旅行をテーマにしたSF映画を観たり、小説を読むたびに、年甲斐もなく堪えられず憤慨する私は、馬鹿な男なのでしょうか?
講談社から出ている『タイムトラベルの哲学』(青山拓央)って本は、こうした疑問や不満に応えてくれる、なかなか楽しい一冊でした。時間を論じる本って、なんだか妙な誤魔化しや、ご都合主義的な定義が横行して、都合の悪い矛盾を黙殺して論じない事が屡々ですけれど、『タイムトラベルの哲学』はブルーバックス的な明快さで、時間の本質に迫ってくれる、とても満足度の高い本でした。
時間の彼方で冒険活劇に興じるSFよりも、机の上で、時間とは何ぞやと考察に耽る静かなる想いの方が、ずっと豊かな想像力であると断じる私は、エンターテイメントを素直に楽しめない類の人間でしょうか。
2006.02.13 10:16 | URL | #- [edit]
猫目 says... "let's do the time warp again?"
魔羅将軍、お久しぶりです。

さすが、暗黒のマッド・サイエンティストです。大いに同感したいところです。

「歴史」が狂う、というのは、関が原で家康が勝った、とか、負けた、とか、そんな、大雑把な話ではないはずですよね。未来の人間が、一歩でも、過去のその場に足を踏み入れたら、それは、もう、歴史の磁場が狂ってしまっているわけですね。あるはずのない足跡が残っただけで、過去の人間の視線をほんのわずかでもそらせただけで、歴史はもう、違うものになっている。時間の流れに狂いが生じている。すでに、矛盾が誕生しているわけです。
その矛盾をどう解決するのか。
まさにメビウスの輪のような、眩暈を覚えさせてくれるような議論を求めたいものですね。

「タイムパラドックス」は、SFの永遠のテーマですが、そういえば、われらが朋友R氏の友人に、タイムマシンを製作しているという人がいましたね。そろそろ、完成しているのではないかと期待していますが・・・。

「タイムとラベルの哲学」、面白そうですね。

2006.02.13 15:45 | URL | #- [edit]
idealistk says... "猫さま、魔羅様、時代劇はおやじの時間旅行です"
時代小説。
山本周五郎、司馬遼太郎、藤沢周平、池波正太郎、山田風太郎! おっと、「大菩薩峠」の中里介山がいましたね。これが、中途で挫折というか、勢いを無くして、そのまま十数年経ってしまいましたね。島尾敏男は、温泉に「大菩薩峠」を持ち込んで、読みふけるのがささやかな希望だとどこかで書いていたようです。同感です。

時間旅行は、古いですが、ウエルズの「タイムマシン」の古い映画化(一応カラー)で、時間を逆転してゆくシーンに子どもの頃感激したことを思い出します。最近の映画化されたものも、見てみようかな。

時間旅行理論は、まじめに論じたものは読んでいないのですが、物理学だけでなく、哲学的、さらにはオカルト的にも興味深いですよね。人間と世界の関わりの本質に時間があるのですものね。

われわれが過去に時間旅行するのは、熱力学第二法則に逆らうことになると思われ、あまりまじめに考えませんでしたが、これらからは、魔羅様のように、自分の中で温めておこうかな。
2006.02.16 05:31 | URL | #- [edit]
猫目 says... "おやじたちの楽園"
idealistK様
そうですか、やはり、時代小説、お好きですか。

確かに、時代小説を読むことは、小説を読むことの醍醐味に満ちていると言えます。純粋な楽しみですよね。
昨日も、「鬼平犯科帳」見てしまいました。
最近の作家では、乙川優三郎の「霧の橋」のラストシーンで、うかつにも涙がこぼれてしまいました。
お恥ずかしい・・・(笑)。

時間論。
idealistK様は、確か、理系の専門家でしたね。私は、徹底的に文系なので、どうも、数式やら公式やらが出てくるものが苦手です。憧れだけはあるんですが・・・。

時間旅行について、是非、ご意見をお聞きしたいところです。
2006.02.18 18:57 | URL | #GaU3vP2. [edit]

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